2022.12.01
ひとりで生きていくための“おひとりさま生活”チェックポイント
現在ひとり暮らしの人もそうでない人も、年をとって自分がひとり暮らしをする可能性を頭に入れて生活をシミュレーションすることはよい準備になり、今の家計を見直すことにもつながります。
老後は意外とすぐにやってきます。
考えられるリスクや対策を知っておき、将来に備えましょう。
65歳以上のひとり暮らしは珍しくない
本題に入る前に、まず、「高齢者」の定義について。
現在、一般的には「65歳以上」が高齢者とされていますが、これだけ平均寿命が伸びた今、65歳以上を一律に高齢者と扱うのはかなり無理があります。
ただし、これまでの主要な統計は65歳以上を高齢者としているので、この記事でもそれをもとに話を進めますね。
しかし、日本老年学会・老年医学会のワーキンググループも、「75歳~89歳を高齢者、65~74歳は准高齢者と分けてはどうか」と提言しています。
確かにこのほうが、現実に即している実感はあります。
さて現在、65歳以上のうち、ひとり暮らしをしているのは男性が15.0%、女性で22.1%。
つまり、男性はおよそ6.6人に一人、女性は同じく4.5人に一人がひとり暮らしです(総務省 国勢調査 2020年)。
別の調査によると、65歳以上の人がいる全世帯のうち、単身者の世帯は28.8%。
三世代以上(9.3%)の世帯よりもはるかに多い割合です(厚生労働省 国民生活基礎調査 2021年)。
もはや高齢でもひとり暮らしというのは普通のことです。
では、そのリスクや対策にはどんなものがあるのでしょうか?
考えられるリスク
経済的な余裕を持てるかどうか
まず考えられるのは、やはりお金の問題です。
現在、一律定年制を定めている企業のうち、「60歳」を定年としているのは72.3%。
一方、「65歳以上」としている企業の割合は24.5%で、これは平成17年以降の調査では最高の割合です(厚生労働省 就労条件総合調査 2022年)。
今後も「65歳以上」を採用する企業は増えそうなので、やはりそれ以降で家計のやりくりをイメージしておくとよさそうです。
老後のひとり暮らしでは、配偶者や家族がいる場合とは異なり、生活費は割高になりがちです。
毎月の支出が年金や仕事の収入を上回り、生活費が不足することも予想されます。
健康でいられるかどうか
健康でいられるかどうかも重要なポイントです。
この年代では、どうしても若いときに比べ病気やけがのリスクが高まります。
もちろん、これはひとり暮らしに限った話ではないですが、ひとり暮らしの場合は特に、何かあった時に初動が遅れて状況が悪化する可能性は否めません。
とりわけ高齢者の場合、年を重ねるごとに認知症にかかるリスクが高まります。
配偶者や家族が健康状態の変化に気づきやすい環境であれば、悪化する前に対応できるケースもあるでしょう。
しかし、独居状態で周囲と密にコミュニケーションをとっていなければ、変化に気づきにくく、診断が遅れます。
必要以上に孤独感を深めずに済むか
ひとり暮らしなので当たり前ですが、この状態は「孤独」や「孤立」と紙一重です。
独居生活をしていると孤独感を覚えることはありますが、必要以上に感じすぎてしまうと、心身に不調をきたす場合があります。
よく言われるのが、「仕事に熱心だった人ほど地域社会の活動に参加しておらず、リタイア後に孤独になりがち」というもの。
いざ仕事がなくなると何をしていいのかわからず、家に閉じこもってしまうと、ますます孤独は深まるばかりです。
積極的に外出をしない、時々会って話をする友人がいないという人は、そのようなリスクが高いといえます。
やっておきたい対策
生活コストを上げないようにする
まずやっておくべき対策は、生活コストを今以上に上げないようにすることです。
賃貸物件に住んでいるなら、現在の家賃より高いところには住まない。
電気やガスの使用を節約して、無駄な光熱費を使わない。
外食などを見直して、食費を抑える。
いきなり大きく減らさなくてもよいですが、老後は現在より収入が減ると仮定して、今よりも使わないように工夫してみましょう。
老後も少ない生活費で生活できるようにするために、今のうちから感覚を慣らしていきましょう。
元気なうちは仕事をする
「高齢者になっても仕事なんて!」その気持ちはよくわかります。
65歳からは公的年金が支給されるため、年金やそれまでの蓄え、退職金などで生活をまかなえるのであれば、働く必要はありません。
しかし、社会との接点を持つ、頭と体を使う、心のハリを保つといった意味でも、働くことには相応のプラス面があります。
何もフルタイムで仕事をする必要はありません。
人に必要とされているうちは、仕事をしておくと、収入以外にもいろいろと恩恵があります。
行政サービスの知識を身につけておく
今すぐには必要ありませんが、何か起きる前にやっておきたいのが、行政サービスのチェックです。
老後のひとり暮らしは、大なり小なり人の支援が必要です。
すぐ近くに家族や頼れる人がいるならいいですが、支援が必要になった時にすぐに対応してもらえるように、住んでいる地域のサービスを調べておきましょう。
生活全般の主な相談先としてあげられるのは、地域包括支援センターです。
自治体によっては、独自のサービスを行っているところもあります。
まとめ:おひとりさまのメリットを生かすためにも、早めの準備を
ひとり暮らしの大変さを述べてきましたが、もちろんひとり暮らしにはいい点があります。
金銭面でいえば、全て自分でお金の使い道を決められるのが最大の利点です。
食事や住む場所、趣味など、あらゆることに誰の許可なく自分の好きなように使えます。
その利点を生かすためにも大切なのは、やはり家計に余裕を持つこと。
家計をコツコツ健全化させ、ひとり暮らしになっても困らないように、今のうちにできることをやっていきましょう。